Lake Como Fashion Weekにてコレクションを発表
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Yōkai Rebirth — 記憶をまとう影たち
本コレクションは、日本独自の妖怪文化に着想を得て、古布や帯、端切れなどに宿る過去の記憶や人々の想いを現代の衣服として再構築した 全10体の一点物作品 で構成されます。
妖怪は単なる幻想ではなく、時代を生きた人々の恐れや祈り、願いの化身。
KIWAの衣服は、その布の記憶を纏いながら、新たな物語とアートファッションの形としてよみがえります。
“影”として語られてきた妖怪たちは、その時代を生きた人々の想い・恐れ・祈り・願いの化身。
その記憶を布ごと再生し、新たな衣へと蘇らせる。
妖怪=怖い存在ではなく「記憶を具現化した存在」
アップサイクル=「忘れられた記憶(着物+人の想い)」を再生
レイクコモという“水の地”にも美しく響くストーリー
海外バイヤーにも通じる「文化 × 再生 × アート」
10体構成にドラマ性が出る
【第Ⅰ部:影の誕生 —記憶の器としての布が霊となる】
(着物・帯アップサイクル中心 / 妖怪の“起源”を描く)
1. 九尾 — 帯アップサイクルドレス
記憶の宿る布が妖艶な九つの尾へ。生命の胎動として幕開け。
2. 烏天狗 — 帯アップサイクルドレス
霊性の覚醒。力・気迫・古代信仰の影。
3. 河童 — 帯アップサイクルドレス
“水”と呼応する妖怪。自然と人間の間で揺れる存在。
4. 雪女 — 着物アップサイクルドレス
静けさ・透明感・余白。影の章を鎮める、霊たちの静謐な終止符。
【第Ⅱ部:願いと物語 — 人が紡いだ伝承のかたち】
(アートファッション × コラボレーション作品 / 記憶=祈りが形に)
5. 獏・織姫 — 短冊ドレス(アートファッション)
1000枚の短冊=無数の祈り=人間の願望のアーカイブ。
6. 酒呑童子 — 日本酒ラベルドレス(アートファッション)
土地・歴史・人の営みを布に纏わせた文化の共鳴。
7. 座敷童 — 着物アップサイクルドレス
「福をもたらす存在」=人間の希望と幸運の象徴。
中盤のクライマックスとして、人の祈りと幸福を象徴する、最も温度のある存在。
【第Ⅲ部:再生と変容 — 布が新たな生命となる】
(工芸技術 × 再構築 / 最もモードで現代的な章)
8. 猫又 — 裂き編み・カットワーク融合ドレス
古布の再構築=「別の命に生まれ変わる」象徴。
猫又の“二尾”が技法の融合を表す。
9. 一反木綿 — マクラメ融合ドレス
布そのものが空を舞い、新しい形態へと変容。
10. ぬらりひょん — 帯アップサイクルドレス
曖昧で掴みどころのない“影の主”。
布・記憶・妖のすべてを内包する存在として、
このコレクション全体を包み込む、威厳ある終章。
1. 九尾 — 帯アップサイクルドレス

記憶の宿る布が妖艶な九の尾へ。生命の胎動として幕開け。
このドレスは、オレンジとゴールドの袋帯に、オレンジの羽織を組み合わせて制作したビスチェドレスである。重厚な帯の輝きと、羽織の柔らかな布の対比が、妖艶さと神聖さを併せ持つ存在を象徴している。
付属のスカート部分には、牡丹文様のアンティーク半幅帯2本と、花モチーフ付きのレースを使用。9本のレースをあしらうことで、九尾の狐の九つの尾を視覚化し、揺れるたびに霊的な気配を纏う構成とした。
デザインコンセプト|荼枳尼天と九尾
本作品は、日本の九尾の狐の原型とも言われる荼枳尼天(だきにてん)の思想と変遷に着想を得ている。
荼枳尼は、もともとヒンドゥー教の女神カーリーに仕える夜叉であり、人の生命力を糧とする恐ろしい存在とされていた。しかし仏教に取り込まれる過程で、その力は制御され、やがて福神へと変化していく。
日本に伝来した荼枳尼天は、在来の狐信仰・稲荷信仰と習合し、破壊と再生、恐怖と美、死と豊穣という相反する要素を内包した存在となった。
若き荼枳尼は、異様なほど美しく、強い性的魅力を持つとも伝えられている。その二面性は、九尾の狐が持つ妖艶さと神性の両義性と重なり合う。
素材と意味
袋帯・半幅帯
長い時間、人の願いや祈りを受け止めてきた帯は、力を蓄えた「記憶の媒体」として、妖怪の身体へと再構築されている。
牡丹文様
富貴・生命力・繁栄の象徴。
荼枳尼天が福神へと変化していく過程を暗示する。
9本のレース
九尾の尾であり、同時に人の欲望・願い・恐れの数。
動くたびに揺らぎ、決して完全には掴めない存在を表現している。
メッセージ
このドレスは、恐れられてきた存在が、時代とともに意味を変え、祝福へと転じていく過程を衣服として可視化した作品である。
捨てられるはずだった帯や羽織は、新たな生命と物語を与えられ、九尾の狐として現代に蘇る。
それは、日本独自の「もったいない精神」と、妖怪文化が持つ善悪の曖昧さ、美と恐怖の共存を象徴する姿でもある。
2. 烏天狗 — 帯アップサイクルドレス

霊性の覚醒。力・気迫・古代信仰の影。
帯・羽織アップサイクル パンツドレス
本作品は、ラメ糸を織り込んだ帯と、ビロードの羽織を組み合わせて再構築したパンツドレスである。重厚な光沢をもつ帯地と、深い黒の質感が、山中に棲む異形の存在――烏天狗の威厳と緊張感を象徴している。
ハイウエスト位置で生まれるねじれの構造から、自然なギャザーが立ち上がり、ウエストの大胆な開きと大きく広がるパンツシルエットが、身体の動きに合わせて力強い風の流れを生む。
上衣|風をまとう構造
上に羽織る上衣は、風通紗(ふうつうしゃ)の羽織から制作したもの。大きく膨らむパフスリーブは、空気を孕み、風を可視化するための造形である。
風通紗は、表と裏で異なる色糸を用いて織られる特殊な生地であり、本作品では表が黒、裏が赤。動きに応じて黒地の中から赤い文様が浮かび上がり、それはまるで、静寂の中に潜む怒りや霊力が、一瞬だけ姿を現すかのようである。
張り感と透け感を併せ持つ素材特性を生かし、布そのものが「風」「気配」「存在の輪郭」を語るデザインとした。
デザインコンセプト|天狗という存在
天狗は、もともと恐ろしい妖怪として人々に畏れられていた存在であった。しかし江戸時代以降、山岳信仰や修験道と結びつき、次第に神格化された守護的存在として語られるようになる。
烏天狗はその中でも、より武人的・霊的な側面を持ち、山伏の姿で現れ、突風を起こし、人を惑わせる一方で、災厄消除や魔除け、開運の象徴ともされてきた。
その二面性――畏怖と加護、破壊と守護――を、構造と素材の対比によって表現している。
団扇と風の象徴性
天狗の象徴的な道具である「羽団扇」は、風を起こし、空を飛翔するための力の象徴である。
本作品では、直接的なモチーフとして団扇を用いるのではなく、
・ねじれによって生まれる布の流れ
・パフスリーブが生む空気の溜まり
・透ける黒の奥から浮かぶ赤
これらすべてを「風の痕跡」として再構築した。
目に見えない力が、衣服を通して可視化される瞬間を捉えている。
メッセージ
この烏天狗ドレスは、風を操る存在としての天狗の本質を、衣服という構造体に置き換えた作品である。
アップサイクルされた帯と羽織は、かつて人の身体を包み、祈りや格式を宿してきた素材であり、その記憶は、天狗という境界的存在と深く共鳴する。
それは、自然と人、恐れと信仰、過去と現在のあいだを行き交う、日本の妖怪文化そのものを纏う試みである。
3. 河童 — 帯アップサイクルドレス

“水”と呼応する妖怪。自然と人間の間で揺れる存在。
本作品は、アンティークの菊文様が織り込まれた深いゴールドの袋帯と、深いグリーンの訪問着を組み合わせて制作した、背中が大きく開いたビスチェドレスである。重厚な帯の光沢と、深緑の布が持つ静かな湿度が、水辺に棲む存在の気配を漂わせている。
ドレスに重ねたショール風のドレープは、上田紬を3枚重ねて構成。同素材で制作したテープを用い、3本の波紋様を縫い付けることで、水面に広がる気配や、目に見えない存在の通過を表現した。
デザインコンセプト|変容する河童のかたち
本作品は、時代とともに姿を変えてきた河童の存在像に着想を得ている。
時代や土地の価値観によって形を変えてきた曖昧な存在である。
「取り憑くもの」としての河童
九州地方を中心に、河童は単なる水辺の妖怪ではなく、人に取り憑く存在として語られてきた。
若い女性や少女に取り憑き、甘い声で言い寄る
心身を消耗させ、記憶を失わせる
譫言を語り、食事を取らなくなる
そうした伝承は、河童が「水の中の怪異」であると同時に、人の内側に入り込む、境界的な存在であることを示している。
背中を大胆に開いたこのドレスのシルエットは、人と異界、水と陸、内と外の境界を可視化するためのものである。
素材と象徴
・菊文様の袋帯
生命力と再生の象徴。
水辺に潜む存在でありながら、循環と持続を内包する河童の本質を表す。
・深いグリーンの訪問着
水草や深淵を思わせる色調。
人を引き寄せる静かな危うさを宿す。
・上田紬のドレープと波紋様
波は、姿を見せずとも存在を知らせる痕跡。
河童が通り過ぎたあとの、水面の揺らぎを象徴する。
メッセージ
この河童ドレスは、形を固定される以前の、不確かで流動的な河童像を、衣服として再構築した作品である。
アップサイクルされた布は、水のように形を変えながら、忘れられた記憶や恐れを現代へと呼び戻す。
それは、日本の妖怪文化が持つ、曖昧さ、変容、境界性そのものを纏う行為でもある。
4. 獏・織姫 — 短冊ドレス(アートファッション)

1000枚の短冊=無数の祈り=人間の願望のアーカイブ。
本作品は、役目を終えた振袖をドレス本体に用い、無数の「願い」を短冊として縫い重ねた、参加型アートファッションである。日本の伝統行事「七夕」に着想を得て、願いを可視化し、社会・文化・世代をつなぐことをテーマに誕生した。
ドレス本体|夢をまとう身体
ドレスの本体には、深い青地に竹や四季の花、平安時代の姫が描かれた振袖を使用。夜空を思わせる藍のグラデーションは、夢と現実の境界を漂う存在――人の願いを喰らい、悪夢を祓う霊獣「獏」と、天と地をつなぐ「織姫」という二つの象徴を内包している。
身体に沿って流れる文様は、個人の記憶、時代の祈り、日本文化の時間軸を一着の中に折り重ねていく。
短冊|願いが成長する構造
このドレスの最大の特徴は、一枚一枚、人の手によって記された短冊である。短冊には、サスティナブルな素材を使用。国内の企業・工房・地域と連携し、「廃棄されるはずだったもの」に、新たな意味と役割を与えている。
短冊素材:
Cafetex(大和紙料株式会社提供)
古紙100%から生まれた革新的な紙糸。
コーヒーフィルター製造の端材を活かし、約1年半の研究を経て誕生。
小川和紙の端材(鷹野製紙所提供)
1300年の歴史を持つ小川和紙。
裁断時に生まれる5色の端材が、ドレスに静かな彩りを添える。
楮チリ入り和紙
本来は廃棄される皮や繊維を混ぜ込んだ、サスティナブルな和紙。
平和おりひめ(広島)
広島平和記念公園に捧げられる折り鶴を再生した和紙。
折り鶴の破片をあえて残し、平和への祈りが飛び立つ姿を表現している。
成長し続ける作品
これまでに、約500枚の短冊が縫い込まれてきた。国内外の展示を通じて、来場者自身が願いを書き、作品は“人の想い”によって成長し続けてきた。
2025年には、カナダ・バンクーバー 日系国立博物館・文化センターのショーケースにて、来場者がその場で短冊を書き加える展示を実施。
そして本作は、高校生との共同制作をもって「完成」を迎える。完成とは終わりではなく、多くの願いが一着に集まり、次の世代へ手渡される状態を意味している。
メッセージ
この短冊ドレスは、ファッションであり、アートであり、社会との対話である。
願いは、ひとりでは小さくても、集まることで、布となり、形となり、未来を包む。
獏は夢を喰らい、織姫は想いをつなぐ。
このドレスは、人々の願いそのものを纏うために存在している。
5. 酒呑童子 — 日本酒ラベルドレス(アートファッション)

土地・歴史・人の営みを布に纏わせた文化の共鳴。
本作は、日本各地の酒蔵から集めた日本酒ラベルを布へと再構築し、一着のドレスとして立ち上げたアートファッション作品である。日本酒も、着物も、土地の水、風土、人の手、時間によって育まれてきた「日本の記憶」そのものである。
素材|ラベルが布になる瞬間
全国 20蔵・63種、約 600枚 に及ぶ日本酒ラベルを使用。ラベルは、裁断・再構成を経て、波打つ「ラベル布」へと姿を変える。
ラベル一枚一枚には、その土地の水、米、気候、蔵人の思想が刻まれている。それらが重なり合うことで、本作は**土地の文化と水を映す“現代の紋様”**となった。
造形|発酵するドレス
ドレス全体に施された大きなうねりは、川の流れ、酒が仕込まれる水の循環、そして発酵という「目に見えない時間」を想起させる。
ラベル布が揺れ、重なり、光を反射するさまは、文化が固定されることなく、形を変えながら受け継がれていく美しさを象徴している。
酒呑童子という存在
酒呑童子は、日本三大妖怪のひとり。
酒を愛し、宴に生き、恐怖と魅力、破壊と祝祭という二面性を併せ持つ存在である。
本作では、日本酒を象徴する“顔”であるラベルを連ねることで、酒呑童子を単なる怪異ではなく、土地の力と人の営みを映す象徴的存在として再解釈した。
記憶をまとうということ
織りや紋様、酒の銘柄や意匠の奥には、その土地に生きた人々の歴史、暮らし、美意識が息づいている。
このドレスは、日本酒と着物が共鳴し合い、「飲む文化」「纏う文化」が交差することで生まれた循環する日本の記憶をまとう作品である。
メッセージ
ラベルは捨てられるものではない。それは、土地の物語の断片であり、水と人が紡いだ記憶のかけらである。
酒呑童子は、その記憶を集め、飲み干し、再び祝祭として立ち上がる。
このドレスは、日本という国が持つ、循環する美しさそのものを身体に纏うための一着である。
6. 雪女 — 着物アップサイクルドレス

静けさ・透明感・余白。影の章を鎮める、霊たちの静謐な終止符。
雪女は、雪の夜に現れ、天から舞い降りる存在とも語られる。
白い息、凍てつく静寂、そして触れれば消えてしまいそうな、儚さの象徴である。
このドレスは、白帯と打掛から仕立てたビスチェとスカートによるセットアップドレス。背には、着物地とオーガンジーを重ねたトレーンを配し、雪が地上に降り積もり、風に舞う情景を重ねている。
帯や打掛といった厚みのある素材に、軽やかな透け感のある生地を重ねることで、重さと軽さ、静と動の対比を生み出した。それは、雪が持つ二面性――静かに降り積もりながらも、風とともに姿を変える性質を映している。
襟元には、雪の結晶の刺繍。一つとして同じ形のない結晶は、一瞬の美と、二度と戻らない時間の象徴である。
この作品は、雪女という存在がまとう、冷たさと美、静寂と動き、その相反する要素を一着に封じ込めた。雪の気配を纏う、儚くも凛とした「白の記憶」のドレスである。
7. 座敷童 — 着物アップサイクルドレス

「福をもたらす存在」=人間の希望と幸運の象徴。
座敷童は、家の納戸に住み、その家に福をもたらす存在とされてきました。人の気配と記憶が静かに積み重なる場所。見えないけれど、確かに「いる」もの。その気配を、日本家屋という空間の構造そのものに重ねて、このドレスは生まれました。
欄間や格子戸。
採光や通風という機能のために生まれた建具は、やがて装飾性と芸術性を帯び、「空間」や「隙間」そのものが、意味を持つ存在へと変化していきます。
このドレスは、その“隙間に宿る気配”から着想を得ています。
ドレスに施された空間は、ファゴティング(ドロンワーク)というかがりの技法によって構成されています。
布と布のあいだを、羽織生地を裂いて作った着物毛糸で刺繍し、あえて「間」を残したまま、つなぎ留めました。それは閉じるのではなく、気配が通り抜けるための構造です。
使用したのは、ゴールドと朱を織り合わせた帯、ゴールドと黒を織り合わせた帯。二本の帯が、日本家屋を思わせる色彩として重なり、静けさの中に、あたたかな存在感を宿します。
そこにいる。けれど、姿は定かではない。
座敷童のように、このドレスもまた、空間に宿る「福」と「記憶」の象徴として、静かに佇みます。
8. 猫又 — 裂き編み・カットワーク融合ドレス

古布の再構築=「別の命に生まれ変わる」象徴。
猫又の“二尾”が技法の融合を表す。
オレンジ地に花文様が広がる振袖と、花柄の24金ゴールド帯を用い、エスカルゴラインのドレスとして再構築した一着。
帯は文様に合わせて切り取り、カットワーク刺繍の技法によって再構成し、立体的な花の表情としてドレスに組み込んでいる。
身体に沿って渦を描くようなシルエットと、アシンメトリーな裾からのぞくチュールが、動くたびに軽やかな余韻を残す。
三毛猫を思わせる、オレンジ・金・緑の配色は、愛らしさと妖しさが共存する猫又の二面性を映し出す。
祝祭性を帯びた金彩と、深みのある色彩の重なりは、変化と遊びを象徴する存在としての猫又の性質を纏わせている。
背中に結ばれた大きなリボンは、二本に分かれた猫又のしっぽを表現するモチーフ。
格式ある振袖と帯に、切り取りと再構成という手仕事を重ねることで、人と妖の境界に立つ存在としての猫又を、現代のアートファッションとして立ち上げた。
このドレスは、変化と再生、そして愛嬌と妖気が交差する“境界の存在”としての猫又を纏う作品である。
9. 一反木綿 — マクラメ融合ドレス

布そのものが空を舞い、新しい形態へと変容。
一反木綿は、夜空を滑るように現れ、布の姿で人にまとわりつくと語られる妖怪である。
風に乗り、ひらりと舞い、捕らえようとすればするほど、その姿はほどけ、形を変えていく。
この作品は、「布そのものが生きる」という発想から生まれた。
三枚の着物を切り、ひも状にし、それらを編み合わせることで、一枚の布を、再び“動く存在”として立ち上げている。
切ることは終わりではなく、新たな運動と構造を生み出すための始まりである。
セットアップドレスとして構成された外側の編みは、風を含み、身体の動きに応じて揺れ、ほどけ、重なり合う。
それは、一反木綿が夜空を泳ぐような、軽やかで捕らえどころのない存在感を映し出す。
インナーには、羽二重の黒無地の着物、そして黒に赤い花紋様を織り込んだ銘仙を用い、キャミソールワンピースとして仕立てた。
静かな黒の層の内側に、密やかに浮かび上がる赤は、布の奥に潜む気配と、物語の熱を象徴している。
このドレスは、布が妖怪となり、妖怪が衣服となる境界に立つ作品である。
ほどかれ、編まれ、再び纏われることで、一反木綿という存在は、現代の身体の上に、新たな命を得る。
10. ぬらりひょん — 帯アップサイクルドレス

曖昧で掴みどころのない“影の主”。
妖怪の総大将とされる「ぬらりひょん」を、威厳と上品さを併せ持つ存在として再解釈したセットアップ作品。
江戸時代の絵巻物に描かれるぬらりひょんは、恐ろしさよりも、どこか余裕と品格を感じさせる姿で表現されている。本作ではそのイメージを、クラシックなジャケット、コルセット、パンツという現代のフォーマルウェアの構成に重ね合わせた。
帯地に織り込まれた金糸と、光琳百人一首の文様が生み出す格調高い表情は、妖怪の総大将としての存在感と、静かな威厳を纏うかのような佇まいを形づくっている。
「ぬらりひょん — セットアップ」は、妖怪と権威、そして装いの形式美が交差することで生まれた、現代における“支配と気配”をまとう作品である。
ジャケット・コルセット
金糸を織り込んだ帯地を使用。
光琳百人一首の文様が全通で織り込まれ、豪華でありながら、軽さと張りを併せ持つ質感。
格式と動きやすさを両立させた構造。
パンツ
紺の綸子地に桜文様が描かれた振袖を再構築。
落ち着いた地色に浮かぶ花意匠が、威厳の中にある華やぎと、静かな気配を添える。